渡り

 

オスが早く渡ることが多い。

メスが次で、若鳥が最後。

ハクチョウなどでは家族単位で渡る。

渡来が早い種ほど渡去は遅い。

高緯度や高標高で繁殖するものほど渡来が遅く、渡去は早い。

秋より春のほうが移動速度は速い。

春は日本海側が多い。

日没後13時間後から活発。

渡る種は脳が小さい。

 

緯度

高緯度になるほど夏は昼が長い。

昼が長いと採餌時間も長くとれ、効率良く短期間で育て上げることができる。

絶食

渡りを始めると食べなくなる鳥が多い。(短期間絶食)

腸は退化して消化吸収能力を止めて、浮いたエネルギーを飛翔のエネルギーにまわす。

 

順位説

若い鳥は遠くの越冬地で過ごす。

 

強い個体(成鳥オス)が近くの越冬地で、生活資源(餌など)を優先的に確保してしまうので、

劣位の個体はもっと遠くへ行って、食べ物を探す必要が有る。

雄は繁殖期に縄張を確保する必要があるので、繁殖地から近い方が有利。

成鳥の雄は一番体力が有るので、多少の寒さに耐える。

 

ベクトル航法仮説

鳥には生まれながらにして、どの方向にどれだけの時間を渡って行けばいいのか、

遺伝的にプログラムされているという説。

 

渡り

長距離

昆虫食

単独

夜間

短距離

種子食、果実食

群れ

(特に午前中)

 

昼に渡る鳥

高度が低い

帆翔する鳥に多い。

ハクチョウ、ツル、コウノトリ、ペリカンなど、ワシタカ類に襲われない大型の鳥は、上昇気流を利用して体力の消耗を減らす。

飛行が巧みでワシタカに襲われず、飛びながら餌をとれる、

ツバメ類、アマツバメ類。

密集した群れを作るムクドリ、コムクドリ、スズメ、メジロ、レンジャク、ヒワ類。

 (ツバメは昼ばらばらに渡り、夜集合して寝る。)

ワシタカ

ヒヨドリ、メジロ、カラスなどは渡りが短距離なので、採餌と渡りの両方を昼に行える。

他にモズ、セキレイ類。

 

太陽の位置から自分の位置を読み取り方向を決める。

紫外線は雲を透過するので、渡り鳥は曇天でも太陽の位置が判る。

体内時計の助けを借りて正確に位置を知る。

 

出発の時間は種により違う。

昼と夜

ガンカモ類

アオサギ、シギチなど干潮に合わせた採餌方の鳥は渡りも昼夜

夜に渡る鳥

長距離を渡る種が多い

高度が高い

羽ばたいて飛ぶ鳥に多い。

小鳥やフクロウ類、ヨタカ、クイナ類、ウ類

ホトトギス、一部のヒタキ(オオルリ、キビタキなど),

ムシクイ、アトリ、ツグミ類、ホオジロ類など多くの鳥。

捕食者からの危険性が低い。昆虫食の鳥では夜飛行することで、日中は採餌に専念できる

暑さに弱い小鳥類では日中の暑さを避けられる

乱気流が起こりにくい。

大気の状態が安定しているので直線距離を長距離移動するのに適している。

 

北極星を中心とする35度以内に有る小熊座、カシオペア座などの形で方向を定める。

星が見えないときは、風や地磁気で方向を定める。

 

出発の時間は日没後30分〜1時間

多くのスズメ目、チドリ目の鳥は昼行性だが、夜間に渡るものが多い。

 

群れで渡る種

昼に渡る種に多い。

シギチは昼でも夜でも群れ。

ペリカン、ツル、ハヤブサなど帆翔する鳥は群れが多い。

カモメ、アジサシ、ウミスズメ、ミズナギドリ、ウミツバメなど、海鳥は一般に群れで渡る。

ヒヨドリ、メジロ、カラスは他の鳥を見ながら渡るので、コースを間違える心配が少ない。

単独で渡る種

夜に渡る種に多い。

ムシクイ、ヒタキ、ホオジロ、アトリ

ツバメはバラバラに昼渡る。夕暮れに集まって眠る。

サギ類、トキ類では昼渡る種は群れ、夜わたる種は単独。

 

太陽説、星空説、視覚説、環境説、地磁気感応説、遺伝的方向説、

太陽コンパス説、磁気感応説、地理的座標説など

 

春の渡りは生まれた場所への執着心。

秋の渡りは食物を求めて。

食物説

北半球では繁殖期に北部で虫が多く発生する。

冬は虫が減るので南へ移動、少しずつ移動距離が長くなった。

大陸移動説

渡りを大陸移動と結びつけた説。

氷河説

氷河時代に温暖な地域に移動したが、氷河の後退に伴い北に移動。

この繰り返しが渡りに発展。

 

天体航法

鳥が太陽、星などの天体を手がかりに、飛行方向を定めること。

太陽コンパス

昼、太陽を利用

星座コンパス

夜、星座を利用

指標にしている特別な星があり、種により異なる。

ホシムクドリでは北斗七星を指標としていた。

SaverEmlenもプラネタリウムに鳥を入れて観察し、星座が渡りの方向を定めていることを確かめた。

 

磁気コンパス

曇天時など

ハトの幼鳥は磁気コンパスを利用するが、成長の段階で太陽コンパス

利用を達成していく。

 

磁気センサー

ハトの内耳にある壺嚢(このう)という感覚器官が磁気センサーの役割をしているとして、ハトの帰巣性は地磁気と関係があるとの説も。

地球磁場

方向を知る一つの方法として地球磁場を利用する。

南北を指す磁石を持っているのではなく、地磁気の磁力線の

方向と水平方向のなす角度で伏角の場所による違いを方角を知る手掛かりとしている。

光依存仮説

磁気を目の感光色素で感知し、視覚情報を解して全能領域の一部(クラスターN)に伝えるという『磁場を見る』説。

磁気コンパス

鳥は体内の磁気コンパスではなくて、体内の化学反応によって地磁気を感知して、進路を決定しているという説がある。

地磁気で生じる化学反応を、鳥が感知している可能性がある。

 

馬飛び渡り

繁殖地が、より北部の集団ほど、より南部で越冬する。

 

ノスリなど、集団が南北に広く分布する種ほどよく見られる。

欧州で繁殖するハジロコチドリは、

最も北で繁殖する個体群が最も南で越冬。

英国のハジロコチドリは渡りをしない。

 

高度

高度が高くなるほど空気が薄くなるので、抵抗は小さくなる。

その分速く飛べ、エネルギーの消費が少なくてすむ。

酸素は薄くなるが、鳥は効率的に血液中の酸素を利用できる。

5001,500mほどが多い。

タカ類では300m前後。

向かい風の時は高度が低い。

春の渡りでは、秋より高めに飛ぶものが多い。

水蒸気を多く含む雲の中に入ると、翼が凍ってしまう危険が有る。

そのため、雲の上か下を飛ぶ。

臭い

ホシムクドリの嗅神経を傷つけると渡りに障害となる。

 

蕪島のウミネコの98%は前年と同じ場所に巣を作った。

イワツバメのヒナを移したら、翌年に育った場所に戻った。

 

繁殖

ミヤマシトドの実験では渡りをさせないと繁殖しない。

渡りと繁殖が結びついている例はウミウでも認められる。

鵜飼のために閉じ込めて飼育し、渡りをさせない雌雄では、繁殖活動を行わない。

 

高度11,300mで航行中のジェット機がマダラシロエリハゲワシに衝突。

羽ばたいて渡る種では、体温が上がり過ぎないように高いところを飛ぶ。

 

追い風のとき

高く上がって風に乗る

向かい風のとき

風の弱い低空を飛ぶ

 

 

渡り

キタヤナギムシクイ

長距離

長く尖る

チフチャフ

短距離

丸みがある

長い翼の方が長距離飛行に適する

丸みのある翼の方が獲物を機敏に追える

 

ウィングチップ

翼を畳んだ状態での初列風切と次列風切の差

 

渡り

ウィングチップ

日本のウグイス

漂鳥

11mm

8mm

フィリピンのウグイス

留鳥

45mm

尖った翼は長距離移動に適する。

 

シギチの秋の渡りでは親が一ヶ月早い

7上〜8

成鳥のみ

7末〜8

成鳥ピーク

8

幼鳥出始め

9上〜中

幼鳥ピーク(成鳥ほとんどいない)

トウネンの秋の渡りは雌、雄、幼鳥の順。

 

 

渡来

渡去

一番早い

センダイムシクイ

センダイムシクイ エゾムシクイ

二番目

エゾムシクイ

遅い

メボソムシクイ

メボソムシクイ

 

 

ノビタキ成鳥の帰還率

50%

25%

 

カシラダカ

光周期

8L

11L

16L

体重(g)

17

18

20

ヘマトクリット(%)

49

40

41

卵巣(mg)

4

8

33

長径(μm)

249

357

703

精巣(mg)

2

8

216

甲状腺(mg)

3.75

2.33

4.00

甲状腺上皮細胞壁厚(μm)

3.5

4.3

6.6

脂肪(g)

0.72

0.86

3.19

 

イエスズメ

留鳥性が強いが、1,200kmを移動した例が報告されている。

ウミネコ

その年生まれの若鳥だけの集団を形成し、

親より先に越冬地に飛び立つ。

オオソリハシシギ

メスで9日、11,000km無着陸飛行の記録あり。

オジロワシ

春と秋でルートが異なる。

春はカムチャツカ、千歳列島を通り日本にやってくる。

秋はサハリン、ロシアの沿岸を通り、繁殖地へ。

春は短い期間で渡り、秋はゆっくり渡る。

オナガガモ

繁殖域は広いが、日本で越冬する個体はロシア北東部からのもの。

日本で越冬した個体が北アメリカで越冬する場合も。

カシラダカ

日照時間が13時間を越えると渡りの衝動が高まり、さらに気温が18度を超えるとそれが高まる。

キョウジョシギ

春多く、秋少ない。

コサギ

フィリピンで越冬する個体も。

サンショウクイ

渡りは昼

シマアオジ

大陸沿いを渡るので、日本では北海道以外の記録は少ない。

セッカ

大阪では、繁殖する個体と越冬する個体が入れ替わっている。

ツグミ

千島列島、樺太を経て島伝いに来る個体群と、大陸から日本海を越えて来る個体群とがある。

北海道では旅鳥、本州には冬鳥として渡来するが、日本を通過してさらに南へ行く個体群もいる。

トウネン

日本に飛来する個体はオーストラリア沿岸で越冬。

ノドアカハチドリ

小型ヘリコプターの航続距離は500km前後。

全長8cmのノドアカハチドリは秋になるとメキシコ湾を飛び越えて中央アメリカに渡る。

メキシコ湾の幅は800km

ハチクマ

春と秋ではルートが異なるが、これは気象条件の違いによる。

秋は東から西に安定した風が吹くので、九州から西に向かい、東シナ海の上を渡る。

春はその風がないので海の上は渡らず、遠回りだが安全なルート、朝鮮半島を経由する。

ホシハジロ

秋は東(ロシア〜北海道ルート)の群れと、西(朝鮮、中国ルート)の群れがある。

キンクロハジロも?

ホシムクドリ

実験で渡りの方向が晴天の次の曇天の日にも維持されたが、

曇天三日目には相当の混乱が見られた。

マガモ

実験で体内時計を狂わせると、太陽が見えたときは体内時計の狂いに応じて方位が狂ってくるが、全天の星が見えれば体内時計を狂わせても方位はほとんど影響を受けない。

マガン

植物性の渡り鳥では長距離の渡りを効率良く行うために小さく単純な消化構造しか持つことができない。

時に休息無しで数千キロの渡りを行い、多大なエネルギーを必要とするので質の高い食物を大量に摂食しなければならない。

 

津軽海峡

クマゲラ、ハシブトガラ、ミヤマカケス、シマエナガが北海道を渡った記録がある。

 

熱帯地方の留鳥

温帯地方の渡り鳥

年一回繁殖

年一〜三回繁殖

一腹卵数の平均23

一腹卵数の平均45

渡り鳥の方が効率が良い。

 

多くの鳥は、不利な向かい風を避けるため、春と秋で異なった方向へ渡る。

ループマイグレーション

春と秋で渡りのコースが異なる。

キョウジョシギでは春は南方諸島から日本列島を北上し、シベリア東北部に達する。

秋は太平洋上を南下。

 

8の字型渡り

ハシボソミズナギドリは『8の字』型の渡りを行う。

 

ブリーディング・サマービジター

(繁殖夏鳥)

ツバメなど

ブリーディング・ウインタービジター

(繁殖冬鳥)

アホウドリ、クロアシアホウドリなど

サマービジター

(夏鳥?)

ハシボソミズナギドリは日本では繁殖しないが、主に夏見られる。

オオジシギは日本で夏繁殖、オーストラリアで越冬。

越冬地のオーストラリアはその時期は夏なので、オーストラリアではサマービジター。

ダイサギは亜種オオダイサギが冬鳥。

亜種チュウダイサギが夏鳥。

種ダイサギとしては留鳥。

 

歩く渡り鳥

エミュー

 雨季と乾季のパターンがあるので定期的に移動する亜種も。

 標識調査で500km移動した記録も。

泳ぐ渡り鳥

ペンギンウミスズメなどの多く

 まだ飛べない雛と、換羽中の親。

 1,000km以上の渡りを行うものもいる。

 

雨季と乾季で渡る鳥

アフリカ大陸のコイヌワシは乾季に南部で繁殖。

繁殖が終わると北部で雨季を迎える。

 

アフリカサシバは生息地の北部で雨季に繁殖、

南部で乾季に過ごす。(10月〜3)

 

東西に渡る鳥

ビロードキンクロは北米北西部のアラスカで繁殖。

合衆国の東海岸に渡る。

 

南半球の渡り鳥

南半球で繁殖する渡り鳥の多くは熱帯や亜熱帯で越冬。

北半球に比べて陸地が少なく、海洋が広いので、海鳥が多い。

 

脂肪をたくさん蓄えたグループが飛び立ち、つられて少ないグループも飛び立つ。

(渡りの時だけ胸骨の間に多量の脂肪を蓄積する)

 

まもなく少ないグループは下に降りて採餌、脂肪を蓄えて出発。

この繰り返しにより、群れは別れたり合流したりする。

移動距離は一日に80km位。

メボソムシクイは二日で700kmの記録あり。

ハクガンは一日で2,000kmの記録あり。

 

蓄積脂肪

渡る前に蓄積されていた安定した飽和脂肪酸は、分解しやすい不飽和脂肪酸に変化。

多くの鳥は4日間ノンストップで飛行できるだけの体脂肪を蓄えられる。

体重の27%の蓄積脂肪で、950kmを無着陸で飛行できる。

脂肪を上手に使えば、最高2,500kmの飛行が可能。

メリケンキアシシギは1gの脂肪で90km飛ぶ。

(一般の鳥で55km、魚156km、哺乳類15km)

ハクチョウは1km飛ぶと、1gの脂肪を消費する。

17gのツバメは脂肪を2g消費するだけで、2,000km離れた東南アジアから渡ってくる。

空中で餌が採れる種は、蓄積脂肪が少なくて済む。

多過ぎると体重が重くなり、エネルギー効率が低下する。

小鳥では一時間飛ぶごとに体重の0.8%が消費される。

渡り前の体重は二倍ほどになる。

ミユビシギは50gの体重が渡り前には110gになる。

大型の鳥では50%増の体重でも飛べなくなる。

大型の鳥の利点は逆風でも飛べること。

風の影響をあまり受けない。

渡りの最適な鳥は中型の鳥。

ノンストップで飛べる距離は小鳥で3,000km、シギチで4,500kmほど。

南太平洋で越冬するムナグロは、北アメリカの北極圏で繁殖後、ハワイ諸島まで3,200kmノンストップ。

ワシタカでは体重が15%増える。

海鳥が最多。50100%増える。

 

カシラダカの体重

ツグミの体重

秋の渡来時

16.5g

53g

春の渡去時

26g

100g

 

カシラダカの全脂質量(%)

11

5

4

12

渡り直前

17

 

 

カシラダカ(冬鳥)

1

2

3

4

飽和脂肪酸

皮下

60

52

36

34

59

62

45

32

不飽和脂肪酸

皮下

40

48

64

66

41

38

55

68

 

 

スズメ(留鳥)

1

2

3

4

飽和脂肪酸

皮下

41

27

20

40

31

44

44

52

不飽和脂肪酸

皮下

59

73

80

60

69

56

57

48

 

スズメの脂肪量(%)

スズメの肝臓重量(mg)

4

2.3

5

803

12

6.3

12

1,324

肝臓の機能と体脂肪とは深い関係にある。

 

オオヨシキリの肝臓重量(mg)

渡来時

861

渡去前

1,357

 

フラッグを付けたシギ、チドリを見つけたら。

 

 

 

 

 

 

 

渡りの時速
(km/h)
ミサゴ
20.5
アカハラダカ
25〜30
ノスリ
27
チゴハヤブサ
38
セアカモズ
40
サシバ
40
ハイタカ
41
ヒレアシトウネン
43
ハチクマ
45
ツメナガセキレイ
47
モリバト
50
ウソ
50
オオカモメ
50
ハシボソガラス
50
ツバメ
50
マヒワ
51
ミヤマガラス
52
ズアオアトリ
53
マキバタヒバリ
53
ムナグロ
55
クロガモ
55
ホウロクシギ
58
カナダガン
59
イスカ
60
ミサゴ
62
コクマルガラス
62
キジバト
66
ハヤブサ
70
ホシムクドリ
74
コガモ
120
ヨーロッパアマツバメ
150
ワシタカ類
50〜65
シギチ類
65〜80
インドガン
80
カモ類
80〜95

90%以上が時速22〜72km
ハクトウワシで時速144kmの記録あり。
カッコウは渡来期に一日55km北上
 

渡り鳥の飛行高度(m)
ガン類
9,000
インドガン
6,000
オグロシギ
6,000
タゲリ
4,000
タカ類
ツグミ類
カモ類
3,000
アマツバメ類
2,000
小鳥
500
カイツブリ類
50

500〜1,500mほどが多い。
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